新型コロナウィルスが流行した2020年は、多くの企業が働き方やビジネス戦略そのものを見直すことが急務となった年でした。商品・サービスの購入方法やブランドに対する考え方もわずか数か月で一変し、消費者行動が大きく変化したことで、企業内でかかげていたテクノロジー関係の目標や戦略、優先順位も変更を余儀なくされています。
この市場の激変に対応するためにテクノロジーやデータの活用は必須となっています。今後もテクノロジー関係の職種への依存度や期待値は高まると見込まれているため、IT職種のキャリアパスの1つとして押さえておくべきといえるでしょう。
今回は、2022年以降に伸びていく職種を6つ取り上げ、それぞれの職種に活かせる経験や将来性などをご紹介します。ぜひ皆さんの転職のヒントにしていただけますと幸いです。
コロナ禍で起きた3つの変化
コロナ禍で企業のテクノロジー依存度が高まった背景には、具体的にどのような変化があったのでしょうか。はじめに、コロナ禍で起きた3つの変化について解説します。
テレワーク/リモートワークへの移行
1つ目は、「働き方」の変化です。コロナ感染対策にて3つの密を避けるため、ほとんどの企業はオフィスに集まって働くスタイルからテレワークへと移行しました。緊急事態宣言が明けた後も、完全出社に戻る企業ばかりではなく、出社とテレワークを両立させるハイブリッド型企業が一定数存在します。これに加え、全国各地を渡り歩きながらワーケーションをする人や地方都市に引越しする人など、多様な働き方へと変化しています。
働き方が急激に変わった結果、オンラインで情報を保存したり共有できたりできるクラウドツールが注目されています。また、オンライン上で機密事項をやり取りする頻度も高まり、セキュリティ対策の見直しも必須となりました。働き方の変化により、テクノロジーが求められるシーンが増えているといえます。
需要の変化(巣ごもり/少人数)
2つ目に、「顧客の需要」の変化もありました。コロナの急拡大期では、医療にアクセスできるオンラインの医療サービスや巣ごもり需要が急増し、コロナがやや落ち着いたウィズコロナ期では少人数会食や、少人数の旅行プランといった需要が増えています。
一方で、飲食店やフィットネスジムなど、「その場所に足を運ばなければ成り立たない産業」の需要は、変化せざるを得ませんでした。
これらの需要変化のなかでスマートデバイスの活用が急増しています。自宅や出先のどこからでも、スマートデバイスの機能を用いて、スムーズな消費行動につなげることが、今後の重要な要素となります。
組織体制の変化(スピード感/VUCA)
3つ目は、「組織体制」の変化です。従業員の働き方、顧客の需要の変化を受入れながら、持続可能な事業を運営していくためには、組織の在り方そのものを変えていかねばなりません。
事業活動の多くを非対面で進めなくてはならないため、必然的にオンラインでのコミュニケーションが求められ、オンラインならではのスピード感を保たなくてはなりません。また、コロナの次に何が起こるか予測のつかないVUCA時代に適応し続けるには、その時々で柔軟に変化できる組織体制へと、見直しが必要でしょう。
2022年以降に注目|IT6職種と年収・向いている人は?

先の章で解説した3つの変化をふまえ、2022年以降に注目されるであろうIT職種を6つ、取り上げました。それぞれの職種がなぜ伸びると考えたのか、当該職種に転職するために、どういった経験が活かされるか、想定される年収などをご紹介します。
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サイバーセキュリティ
CEOを始めとするビジネスリーダーが今、最も必要としているのがサイバーセキュリティを担う人材です。サイバー犯罪に絡む費用が、2021年に年間6兆ドルに達すると推計されていることに鑑みると、この職種がトップにランクされるのも当然のことと言えるかもしれません。
サイバー犯罪の急増で、関連費用が急増していることから、企業はサイバーセキュリティ分野の優秀な人材を採用し、企業防衛を図ろうとしています。
さらに、働き方が多様化したことで、セキュリティに関する問題が多発しています。従業員が自分のデバイスを使用することで発生する問題や技術的な問題もありますが、ユーザー数が過去最高数に達したことで、会社が支給したハードウェアを使用しても問題が発生するケースも出てきました。
サイバーセキュリティ関連の問題を解決するには、1年間で
約310万人のサイバーセキュリティ人材が世界中で必要になる、と言われています。しかし、こうした人材をすべて調達することは非常に難しいでしょう。これらを考慮すると、2022年に最も需要が伸びる職種は、サイバーセキュリティ関連であると思われます。
具体的には、セキュリティ・オペレーションやガバナンス、リスク&コンプライアンス、IDや承認されたアクセスの管理、クラウド関連のセキュリティとアーキテクチャなど、テック部門の中でも急成長している分野の人材へのニーズが高まりそうです。
サイバーセキュリティを担当する人員が増えれば、情報セキュリティ分野を統括する最高責任者やマネージャーなど、リーダー職への需要も伸長するでしょう。
年収・活かせる経験
サイバーセキュリティの想定年収は800万円~1500万円です。
特にC++、C#、Python、Javaに関して優れた実践的なスキルを持つソフトウェア開発者の需要が高くなっています。企業はユーザーエクスペリエンスの強化を図ろうとしていることから、UI/UXの経験を持つ人材の重要性が高まるものと予想されます。
なお、ヘイズ・ジャパンでは独自の「年収査定サービス」を用意しています。下記ページにて、ご自身の現在年収や業職種などを選ぶだけで、今後の年収可能性が診断できる無料診断です。参考にぜひご活用ください
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クラウドソリューション
2020年~2021年は、業種を問わず多くの企業がハイブリッド勤務の導入に向けて、クラウドサービスの活用を開始しました。オンラインメディアのComputerWeekly.comによると、IT部門管理職の82%が、コロナ禍をきっかけにクラウドの活用範囲を広げたと答えています。
新型コロナウィルス流行当初は、従業員のテレワークシフトを迅速に進めるため、クラウドへの移行は非常に急ぎ足で行われました。このため、現在はクラウドのシステムが堅牢であり、自社の要求水準に適した動きをしているか、もしくは期待通り最適な形で運用されているかを確認する必要があるのです。
こうしたことからクラウド分野の求人で上位に入るのは、クラウドエンジニアとクラウドアーキテクトであると予想されます。この分野で主要なスキルとされるのが、Amazon Web Services(AWS)とMicrosoft Azure 関連のスキルで、この2つのソリューションを使用する企業は80%に達すると言われています。クラウド分野は売り手市場になることが予測され、求人市場の「ホットエリア」となるでしょう。
年収・活かせる経験
クラウドソリューションの想定年収は500万円~1200万円です。クラウドソリューションに転職の際は、SAPやERPのスキルが活かせるでしょう。
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データサイエンス
複雑なデータを分析・解釈し、企業が十分な情報に基づき、タイムリーかつ有益な判断が出来るよう支援するのがデータサイエンスです。データサイエンティストは、機械学習のアルゴリズムに造詣が深く、モデルデータの作成やビジネス上の課題特定、適切なソリューションの実施を通して企業を支援します。
データサイエンスの必要性について、フィットネスジムの事例を挙げて説明します。
コロナ禍で世界中のフィットネスジムが休業や閉鎖に追い込まれたことをきっかけに、自宅などで運動を行う人が増え、健康状態をモニタリングする
スマートデバイスの売上が急増しました。こうした機器類は、私たちのライフスタイルの変化により、ますます不可欠なものになっています。この結果、企業が活用できるデータの数も増加し、これらのデータを分析する人材へのニーズも増大しているのです。
個人的見解では、EdTech(教育テクノロジー)やMedTech(医療テクノロジー)の分野でも同じ傾向が見られるようになると思います。古いデータやモデルは、もはや現状を反映しているとは言えません。このため、
新しいデータやモデルを開発したり解釈したり出来る人材が必要になるのです。ビジネスは情勢を読む力に掛かっており、企業がデータに強い人材を求める理由もここにあるのです。
年収・活かせる経験
データサイエンティストの想定年収は800万円~1400万円です。データサイエンティストには、確率や統計といった数学の知見や統計処理手法、データマイニング手法などが求められます。また、ビジネス課題を特定し整理する力やマネジメント力などのビジネススキルもバランス良く活かせるポジションです。
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DevOps
AWSは、DevOpsについて「その企業の哲学、オペレーション、ツールを組み合わせた開発手法であり、企業はこれを活用することでアプリケーションやサービスを非常に迅速に提供出来る」と定義しています。このモデルの重要な特徴は、開発チームとオペレーションチームが縦割りではなく、時には一つのチームになり、協力し合ってシステムを開発することです。
DevOpsエンジニアは、関係者と協力してソフトウェアの開発を担当することが多く、コードのリリース状況をモニタリングしてソフトの非効率的な部分を特定しています。しかし、DevOpsエンジニアの守備範囲は、ソフトウェアのモニタリングやトラブルシューティングだけではありません。必要に応じて、編集や再設計などもこなします。
実際、DevOpsの市場は、過去5年で
40%から 45%の伸びを見せていますが、今年はこれをも上回る成長率を記録するかもしれません。
年収・活かせる経験
DevOpsエンジニアの想定年収は400万円~900万円となっています。DevOpsエンジニアはスクリプト言語のプログラミング知識や、サーバ管理、インフラ・ネットワークへの理解など幅広い経験をまんべんなく要求されます。加えて開発側や運用側などさまざまな立ち位置の人とのコミュニケーションスキルも活かせる経験でしょう。
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ソフトウェア開発
市場の激変に適応し新しい時代にシフトするために、企業は新しい製品、ツール、サービスを生み出さなければなりません。このために必要とされるのが、ソフトウェア開発者です。需要があるのは大型開発を担当するバックエンド開発者だけではありません。UX(ユーザーエクスペリエンス)などのフロントエンド開発者にもニーズがあります。フロントエンド開発者は、構築したソフトウェアの使い勝手を改善し、また、設計・構築の両方の観点から運用しやすいソフトウェアを作り上げることが出来ます。
IT企業は、新しい時代に消費者から求められる製品やサービス、ツールを提供していますが、こうした企業で働く開発者に対する需要は、特に高まることでしょう。ビデオ会議などのサービスを提供しているZoom社は、コロナ禍の中で
業績を急伸させ、大幅な増益を記録するとともに、売り上げ予測を2倍に引き上げました。
しかし、ソフトウェア開発者が貢献出来るのは、IT企業だけではありません。あらゆる産業のあらゆる企業が、ビジネスの運営をテクノロジーに依存しています。
例えば、配車サービス会社のUber社は、テクノロジーを効果的に活用することで、ドライバーが効率的に乗客を乗せることが出来るようにしました。今の世界で企業を強くすることが出来るのはテクノロジーです。ソフトウェア開発者の需要も引き続き高止まりするでしょう。
今回のコロナ危機により、新たな課題が数多く浮上しています。企業がこれらの課題を革新的に解決するためには、ソフトウェア開発者の存在が欠かせないのです。
年収・活かせる経験
ソフトウェア開発の想定年収は400万円~900万円です。ソフトウェア開発エンジニアには、ソフトウェアやハードウェア、データベースといった基礎的なITスキルが活かせます。プログラミングスキルに加えてドキュメントスキルが高い人も重宝されるでしょう。
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チェンジマネジメント
私がこれまで述べてきたテクノロジーやスキル、ポジションは、企業が重視しているものとしては比較的新しいものです。今回のコロナ禍が変化を加速度的に推し進めたことによって生じた傾向であるとも言えるでしょう。こうした変化の管理を上手く行うことは、企業が2022年も成功を収めるために非常に重要です。
最近私が話を聞いたクライアントは全てチェンジマネジメントの導入に着手していました。ソリューションを自社で開発している企業もあれば、他社から購入したり、自社開発と購入を併用している企業もありました。このため、素早く機動的にチェンジマネジメントを実行できる人材は、非常に重宝されるでしょう。
チェンジ・ファシリテーターやチェンジ・マネージャーは、こうしたチェンジマネジメントを可能にする人材です。彼らは、アナログからデジタルへの移行をスムーズに実行したり、サードパーティ企業と協力してその製品やサービスを企業に導入し、効果的なチェンジマネジメントを支援します。
年収・活かせる経験
チェンジマネジメントの想定年収は800万~1400万円です。チェンジマネジメントを担う職種(プロジェクトマネージャー)には、プロジェクトそのものの予算や人員、スケジュールなどを管理する能力に加え、IT事業全体の戦略設計や、経営戦略のスキルが活かせます。要件定義からテスト、保守・運用といった基礎的なテクニカルスキルはもちろんのこと、企業を変革する視点でシステム構築・運用改善計画等を担います。
IT職でキャリアアップ転職を目指すならヘイズ・ジャパン
新型コロナウィルスの影響で急激な変化を遂げたのは、IT産業だけではありません。私たちが働くビジネスの世界全般に大きな変化が見られました。企業は新しい時代を迎えても繁栄していけるよう、本コラムで紹介した6つの分野の人材をそろえておく必要があります。
2022年以降も、テクノロジーへのシフトは続いていく見込みで、企業も求職者も、相応の心構えが必要です。今回ご紹介した6つのポジションは、今後数か月、数年にわたり需要が加速度的に伸びていくことが予想されています。2022年以降に注目される職種へのキャリアチェンジを検討されている方は、ぜひヘイズ・ジャパンに一度ご相談ください。詳しい求人をお見せしながら、具体的なポジションの紹介が可能です。